雑記帳改めただの雑記だよ

起き抜けに水道水を飲んでいたのに、ミネラルウォーターの美味さに最近あらためて気づかされ、飲料としての水道水から離れている忘れっぽい若者が、ナチュラルにアノニマスに墨を磨る行為の良さを忘れないように…

映画『ミナリ』観るなり業、形、鳴り感じる

 水曜日レディースデイということで(こういう日に違和感を感じる人も増えつつある?)、出掛けたついでに気になっていた『ミナリ』原題もMinariを観てきた。ミナリさんという人の名前かナと予想していたが、韓国語で植物のセリのことらしい。1週間前に独りで観ようかと上映スケジュールを確認したときは丁度いい時間がなくて、まあレンタルまで待てばいいかなんて考えていた自分にラッキーだったなと褒めたい。映画館で観てこそ得られるものが多い作品だった。連れが韓流ドラマ好きということもあって、おごるといったら即決してくれてそれがちょうど上映の15分前。ショッピングモールの中の映画館で小っちゃい子も多かったが、お目当ての作品はその時間でも空席が多い。混雑していたらちょっととも思ったが、平日の夕方120席ぐらいのスクリーンで10組ぐらいのお客さんがいた。

 事前知識はアメリカにやって来た韓国の移民家族の物語ということぐらいで、ポスターに写った赤色の帽子をかぶった若いお父さんの逞しさが印象的だ。関係ないが素人にはパラサイトが衝撃的過ぎてすぐに韓国の話となると結びつけてしまう。あっちは半地下で光の当たらない部屋で、こっちは明らかにザアメリカな荒れた広大な土地、トレーラーハウスで物語は始まる。同じ家族の話であってもほぼ真逆であることを想像するのは容易いことだ。

 内容に触れずにそれでも映画館に足を運びたくなるような紹介をしたいが無理そうだ。新聞にも広告が出ていたし、そもそも私自身がアカデミー賞候補作ということをテレビで見てこの作品を知った。どんなことを書いているのかと、興味本位でこのブログを読んでいる方も観終わった方が多いのではないか。少なくとも私は見るまでは検索をかけたくない方の人間なので、タイトルにネタバレ注意と書いてない以上、全体的にゆったりと時間が流れていて、ところどころハハハハハッとマスクを着けても我慢できない笑いがあり、今年度の映画鑑賞では1人でアクション以外を観ると多多寝落ちしてきた私も体を捩りながら1秒も目を閉じず、生きる力、ガッツをもらったとまとめておく。

 ここからは多少ネタバレありの感想になるので、観てない方はそっ閉じしてもらいたい。

 

 

 

 

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  一言で家族の物語といってもストーリー中にはいろいろな話が詰まっていた。先ずは生業に対する家族の悶着。父親は一生懸命働いて稼いだ金を元に、一生を生活できるくらいの収入が保証される雇われで終わるなんて考えられず、農場経営者として稼ぎ特に息子にその姿を見せることに情熱をかける。一方で家族でそれなりの生活を穏やかにしたい母は現実を見て!としきりに訴え自らも稼ぎ、これがアメリカのやり方だと、投資をし借金を増やす旦那に呆れている。誰も寄り付かないような土地で、夢を叶えようとガムシャラに働く姿をみて熱くならない働く人はいない。(熱くならない男とか使いそうになる。時代錯誤だ)

 家族の形はどうあるべきなのかということも考えさせられる。途中で母方のおばあちゃんが韓国からはるばるやってくる。そしてこのおばあちゃんがなかなか強烈な個性を持ち、他人事として見る分には楽しいが、まあ関わるのはちょっとという感じ。小っちゃいデビッドとの関わりがどんどん深くなっていく様子が良く描かれていた。おしっこを飲ませたり、おばあちゃんから花札を覚えて友達と仲良くなるツールとして使うシーンだったり、おばあちゃんが来た時は挨拶も恥ずかしがり出来なかったところからデビッドがだんだん変わっていく姿も可愛らしい。そしていろいろ起こってのラストシーンで居なくなろうとするおばあちゃんをデビッドとモニカが「そっちじゃないよ、お家は」と追いかけていくところに私は、家族が一緒に住むとはこういうことだと感動した。同じ場所で時の流れをともにすることがどれだけ尊いことなのか考えさせられた。

 鳴りというのは、ミナリから取って付けたようなもんであんまり書けることがない。自然の音、おばあちゃんとセリを植えに行くところだったり、デビッドの心臓音、結構音にも包まれた感じがした。

 最後に身形だ。ダビッドはいつもショートパンツで歩き回り、教会に行く時もお姉ちゃんに注意されながら着替えない。最初の方にお姉ちゃんはお母さんと服を買いに行くシーンもあった。父は大体タンクトップで農作業をするが、教会に行く時の正装はなかなかカッコよかった。おばあちゃんもヨレヨレだぼだぼの部屋着をいつも着ている。どんな身形でも、働いている合間にタバコを吸う父の姿はどこでも画になっていた。

 

 3日前に観てから、もう少し掘り下げられるかといろいろ振り返りすぐに感想をまとめる作業には取り掛からなかったが、ポンコツ頭で考えられることなど大して深みがない。心を動かされたと書いておきながら、感動熱を伝えられないのはもどかしいが、あんまりyoiyoi!!と勧められるのもうっとうしい。

 しつこいが、この映画は1人で観に行くより近しい誰かと観ることをおススメしたい。 ソロ鑑賞は緩やかな流れに寝落ちする可能性大だ。